メンズTBCのヒゲ脱毛に40万使った話②
前回までのあらすじ…
ヒゲが濃かった俺はメンズTBCに行き、ヒゲの永久脱毛を決意する。
「お試し体験コースは鼻の下の左側だけ150本抜いてみますね」というスタッフの声。
あまりの痛みに朦朧とする俺は、この言葉の闇に気付く余裕はなかった……
ピッ! ピッ!
想像を絶する痛みに何度か大きな声を出しながら飛び上がるなどし、なんとか150本分の照射を耐え抜いた。
ウルトラマン・アイ(遮光アイマスク)を外すと大粒の涙がボロボロ溢れ出した。
これには施術スタッフも「痛かったですか?」と苦笑。
笑うな!!
笑うな!!!
カウンターを見ると157と書かれていた。
7発多いじゃないか……(のちにこれはミスショット分を加算しているのだと教えられる)
本当に人生で1,2を争うほど痛かった……ちなみに1位は尿路結石である。
左半分だけがジンジンするほど熱い。心なしか顔が歪んでいる気がする。
受付に戻る前に、尿意もあったのでトイレに行く。もしかしたらあまりの痛さに少し漏らしていたかもしれない。
尿を済ませ、鏡を見て愕然とした。
鼻の下の左半分だけ真っ赤に腫れ上がっているのだ。
そりゃヒゲを150本も一気に抜いて毛穴にレーザーぶち込んだらそうなるわな。
そこで一度冷静になる。
「あれ………これアンバランスじゃね………?」
あの時点で違和感を抱かなかった俺の負けなのだ。
そう、スタッフは意図的に左半分"だけ"抜いたのだ。
今の俺は「なんか右側だけヒゲが濃い人」になってしまったのだ。
「なんか小さくてかわいいやつ」が「ちいかわ」ならば、俺は「みぎひげ」になってしまったのだ。
そうなったら、通わざるを得ないじゃないか……
ハメられた………
受付に戻り、その後の方針についてカウンセリングを受ける。
やっぱりアゴは後回しでも良いので、口周りをなんとかしたい。起きたらドロボウのような風貌と対面する朝はもうごめんだ。
すると、スタッフのお姉さんが手書きで試算したプランを出してくる。
いや待てよ?いつの間にかもう契約するような流れになっている。おかしいな…
プラン表にはこう書かれていた。
約20%減らしたい→100,000円
約50%無くしたい→200,000円
完全に無くしたい→500,000円
これ知ってる、梅竹松の法則だ。
梅と松という比較対象をあえて見せることで、一番買わせたい竹を選ばせる手法だ。
そもそもメンズTBCの料金体系はヒゲ1本単位でカウントするとのこと。
「ヒゲを1本抜いて抜けた毛穴にビームを当てる」という行動1回につき138円掛かる。
ヒゲ1本=コンビニおにぎり1個なのである。
ヒゲ1本の価値についてここまで考えさせられる日が来るとは思わなかった。
つまりお試し体験で150本抜くというのはおよそ20,000円分のサービスだったということになる。
カミソリ会社曰く、一般的に男性のヒゲは20,000〜30,000本あると言う。
そう考えると、顔面全てのヒゲをTBCで無くそうと思ったら単純計算で4,140,000円となる。
口周りだけだったとしても俺はいくら払えば良いのか……漠然とした不安がよぎる。
「増税(当時)が控えているので、契約するなら今がオススメです……」と追い討ちをかけるスタッフ。
諸費用込みで1,600本で200,000円。
ずいぶん丼勘定だな…と思いつつも人生で高い買い物もそうそうないので本気で迷う。
これを安いと思うか高いと思うか……
迷いとは裏腹に、俺の答えはすぐ出た。
「よろしく……お願いします……!!」
(ドン!!)
と。
一括で現金20万を手渡す。
そうして俺はTBCと契りを交わしたのだ。
それから月に2回、100〜200本ずつ施術を受けていくことになる。
いちいち書くとキリがないが、とにかく毎回毎回レーザーの施術は痛く、最後の最後まで全く慣れることはなかった。
不思議と痛くない謎のスタッフも居た。"空打ち"…じゃないよな?
何度か足を運んでいくにつれて、スタッフの足取りがおかしくなる。
そう。現金一括、施術一本だけで終わるわけがなかったのだ。
12,000円の美容液、8,000円の冷却ジェル、5,000円の化粧水、10枚3,000円のビタミンマスクなどの押し売りに遭う。
全部買わされた。これ全部本当の話。
ここまで来るとさながらカルトのよう。
さすがに自分もこの時は金銭感覚がバグっていたのだろう。
宗教2世のように、俺に子供が出来たらヒゲ脱毛2世と言われるだろう。
そうして、ありとあらゆる痛みに耐え、俺は半年のプランを戦い抜いたのだ。
最終日の施術の日は、「もう…ある程度ヒゲも薄くなったはずだしいいだろ…」と、諦めと逃げにも似た感情で卒業を宣言しようと思っていた。
だが、最終日のカウンセリングでスタッフは言う。
「まだ見た感じ残ってますね……」と。
そう、悪夢はまだ終わらなかったのだ。
次回へ続く